脊髄空洞症による宙づり型温痛覚障害

 脊髄障害では基本的に下図のように障害部位以下すべてのレベル※1に感覚障害が生じます。(図は横断性障害の場合)

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しかし、脊髄空洞症では上半身のみに温痛覚障害をきたす宙づり型温痛覚障害という特殊な感覚障害を呈します。つまり、脊髄が障害されたレベルの感覚障害のみが出現し、下肢には感覚障害をきたさないのです。

f:id:tomiri17:20170601011205p:plainその理由は脊髄における伝導路の走行から理解できます。

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空洞は脊髄の中心部に生じますが、この部分にには上行性の神経線維が走行しません。したがって障害部位の以下のレベルには感覚障害が生じません。しかし温痛覚の伝導路は脊髄に入ったレベルで交叉し中心管の前を通るので、空洞の影響をもろにうけてしまいます。こういうわけで脊髄空洞症では空洞が形成された高位の温痛覚障害のみが起こるのです。

 

※1.実際には障害部位の数レベル下から感覚障害が起こることが多いです。