内分泌系のクリーゼ
内分泌系のクリーゼでは甲状腺クリーゼと副腎クリーゼが重要です。
・甲状腺クリーゼ
もともと甲状腺中毒症を起こす基礎疾患があった人に、感染や外傷などの誘因が加わって、極度の甲状腺中毒症状をきたした病態です。過剰な甲状腺ホルモンによって代謝が亢進し、多臓器不全をきたします。
・副腎クリーゼ
急性副腎不全によって、副腎皮質ホルモンが不足することで生じます。低血糖による意識障害、ショックなど致命的な症状をきたします。
ここで注意していただきたいのが、甲状腺クリーゼは甲状腺ホルモンの過剰、副腎クリーゼは副腎皮質ホルモンの不足によって生じるということです。
これらの病態に関しては、甲状腺ホルモンは代謝を亢進するのでストレスを上げるホルモン、副腎皮質ホルモンはストレスに耐えるためのホルモンだと考えると理解しやすいでしょう。
甲状腺クリーゼでは過剰な甲状腺ホルモンによってストレスが耐えられる上限を超えてしまいます。
一方、副腎クリーゼでは副腎皮質ホルモンの低下によりストレスに耐えられる上限が低下してしまいます。
ここで、汎下垂体機能低下症について考えてみましょう。汎下垂体機能低下症では甲状腺ホルモンと副腎皮質ホルモンの両方が低下してしまうのでこれらを治療として投与する必要があるわけですが、このときの順番が非常に大切です。
まず副腎皮質ホルモンを投与してストレスへの耐性を高めた後で甲状腺ホルモンを投与します。この順番を逆にしてしまうと身体がストレスに耐えられず副腎クリーゼをきたしてしまいます。